軽貨物運送車両
軽貨物運送業界における事故の実態と業界特有のリスク
軽貨物運送事業は、EC市場の拡大にともなう宅配需要の高まりを追い風に伸長する一方、事故リスクも急速に高まっています。
国土交通省によれば、平成28年から令和5年にかけて、保有台数1万台当たりの事業用軽自動車の死亡・重傷事故件数は約4割増加しました。同期間、軽自動車以外の貨物自動車では同事故が約2割減少しており、軽貨物運送業界のリスク上昇が際立っています。同省はこれを踏まえ、2025年4月より貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化しています。
参照元:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000172.html)
参照元:国土交通省|報道発表資料:貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正を行いました(https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha02_hh_000665.html)
軽貨物運送で特に注意したい事故リスク
軽貨物運送は、狭い住宅街や商店街を頻繁に走行するうえ、届け先ごとに発進・停止・後退を繰り返すため、一般の貨物輸送とは異なる事故リスクを抱えています。特に警戒すべきは、歩行者や自転車との接触、後退時の巻き込み・接触、駐停車中の追突、時間指定に追われた交差点での安全不確認事故です。
国土交通省の資料でも、保有台数1万台当たりの死亡・重傷事故件数が平成28年から令和5年にかけて約4割増加していることが示されており、業界全体で事故リスクの水準が上昇していることは明らかです。
EC需要の拡大にともない新規参入事業者や未経験ドライバーも増えているため、業界特有のリスク構造を把握したうえで、車両管理の仕組みを整えることが急務となっています。
引用元:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000172.html)
軽貨物運送で事故が起きる主な原因
EC需要拡大による長時間労働と過労運転
軽貨物運送で事故が起きる大きな要因のひとつが、EC需要拡大による長時間労働と過労運転です。
ネットショッピングの利用者増加にともない、個人宅への宅配取扱量は年々増え続けており、ラストワンマイル領域の宅配現場は慢性的にひっ迫しています。ロジクエストの解説によれば、宅配ドライバーは通常、距離・時間指定を考慮した最適ルートを組んで配送しますが、不在があれば一度持ち帰り、再配達を行う必要があります。
結果として走行距離や労働時間が単純計算で増加し、疲労がたまりやすい状態が続きます。過労運転による判断力低下は、追突や安全不確認事故のリスクが高まる恐れがあります。
時間に追われる配送スケジュールと焦りによる安全不確認
次に大きな要因が、時間に追われる配送スケジュールと、それにともなう焦りによる安全不確認です。
ラストワンマイル配送では、消費者から細かな時間指定を求められ、再配達も無料で何度でも発生します。
またドライバーは限られた時間内で複数の届け先を回る必要があり、常に「早く届けなければ」というプレッシャーにさらされます。この心理状態は、交差点での一時停止不徹底や左右確認不足、車間距離の詰まり、狭い路地での強引な進入といった危険行動を招きやすいのです。
適正な運転時間の確保、十分な休息、危険予知能力の醸成が運転者の遵守事項として重要ですが、現場ではスケジュールを優先せざるを得ない場面が生じ、遵守事項と実務にギャップが発生しやすい構造となっています。
1台持ち中心の管理体制と安全教育・車両整備の不足
三つ目の要因は、1台持ちの個人事業主が多い業界構造による、安全教育と車両整備の不足です。参入コストが低いため、未経験者が短期間で開業するケースも珍しくありません。
また、1人事業者の場合は経営者自身が安全管理者として法的責任を負う必要があり、体系的な教育や日常点検が後回しになりがちです。
軽貨物運送の事故を防ぐために事業者が行うべき基本対策
軽貨物運送で事故を防ぐには、2025年4月に施行された制度改正への対応を出発点にすることが有効です。国土交通省の新制度では、貨物軽自動車運送事業者(バイク便事業者を除く)に対し、5つの義務が課されました。
1.営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で講習を受講したうえで、運輸支局等を通じて届出を行うこと。
2.毎日の業務開始・終了地点や業務距離等を記録し、1年間保存すること。
3.事故が発生した場合の概要・原因・再発防止対策を記録し、3年間保存すること。
4.死傷者を生じるなど一定規模以上の事故を国土交通大臣へ報告すること。
5.初任運転者・高齢運転者・重大事故惹起者などの特定運転者へ特別な指導と適性診断を行うこと、の5つが挙げられます。
既存事業者には安全管理者の選任について2027年3月までの猶予期間が設けられていますが、実務では「まず記録の作成保存の型を作る」ことから着手するのが現実的です。
参照元:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000172.html)
参照元:SmartDrive(https://smartdrive.co.jp/fleet/useful-info/light-cargo-vehicle-safety-manager/)
マニュアルや口頭指導だけでは事故を防ぎきれない理由
基本対策を整えたうえで課題となるのが、「実際にどれだけ事故を減らせるか」です。
中小配送業者の運転チェックは管理者やリーダーによる目視・口頭が中心で、人手だけではチェック精度や指導内容にばらつきが生じます。管理のためのシステムを導入することでこうした問題への対処も行えるようになるでしょう。
AIドラレコ・車両管理システムで軽貨物運送のリスクを見える化する
人依存の安全管理を補い、事故を未然に防ぐ仕組みとして注目されているのが、AIドラレコと車両管理システムの活用です。
単なる記録装置ではなく、危険運転の自動検知、記録の自動化、組織的な振り返りまでを一気通貫で支える基盤として位置づけることで、制度改正への対応と事故削減を同時に進められます。
AIドラレコで危険運転を自動検知しリアルタイムに指導する
AIドラレコは、AIによる画像解析でわき見運転や居眠り、車間距離不足、急操作、車線逸脱などの危険挙動をリアルタイムに検知し、車内で音声警告を発することで事故の未然防止を支援します。
通信型モデルであれば、映像や走行データをクラウドへ自動送信し、管理者は遠隔から車両位置と危険挙動を把握できるため、異常時の確認や運転指導が迅速に行えます。
車両管理システムで業務記録・事故記録の作成保存を効率化する
もう一つの柱が、車両管理システムによる記録業務の自動化です。貨物軽自動車安全管理者に課された5義務のうち、業務記録は1年間、事故記録は3年間の保存が求められ、業務開始・終了地点、業務距離、経過地点、休憩状況などを毎日残す必要があります。
車両管理システムを活用すれば、GPSや車載端末で取得した走行データから、業務記録の6項目(①運転者等の氏名 ②車両番号 ③業務の開始・終了・休憩の日時 ④業務の開始・終了・休憩の地点 ⑤業務に従事した距離 ⑥主な経過地点)を自動的に作成でき、国土交通省が示す業務記録・事故記録の様式要件にも対応しやすくなります。
特定運転者への指導記録や適性診断の受診状況を管理する「貨物軽自動車運転者等台帳」の作成負荷も軽減されるでしょう。。
ヒヤリハット共有と週次・月次レポートで組織的な安全管理へ
AI検知データを事故予防につなげる鍵は、ヒヤリハットとしての活用です。危険挙動を短文・匿名で記録し、週次で数件程度を共有会にかけ、月次レポートで傾向を分析する運用が推奨されています。
自動検知→本人との振り返り→組織的な傾向分析の3ステップを型化することで、属人化を防ぎ、組織全体の安全水準を底上げも可能となるでしょう。
まとめ
軽貨物運送は、EC需要の拡大とともに事故リスクが高まる業界特有の構造を抱えています。
2025年4月施行の制度改正で安全管理者制度と記録義務が整備された今こそ、マニュアルや口頭指導だけに頼らず、AIドラレコと車両管理システムを組み合わせて事故を未然に防ぐ仕組みを構築するタイミングです。
危険挙動の自動検知、記録の自動化、ヒヤリハットの組織的活用を一気通貫で回し、現場の安全水準を底上げしていきましょう。
AI 搭載ドラレコ 3 選
これからの車両管理システムには、安全管理機能が必須です。
そこで、ここではすでに多くの企業で導入されている3つのAI搭載型のドライブレコーダーを紹介します。
それぞれタイプが異なるので、導入の参考にしてください。
| 管理範囲 | 動態管理 | 安全管理 |
|---|---|---|
| 運転者認証 | 顔認証(自動) | |
| データ閲覧 可能な人 |
管理者 | 運転者 |
| アルコール チェック |
連携・一元管理 | |
| プラン | 購入 | レンタル |
| トライアル | 2ヶ月可 (台数による) |
|
特徴
- 精度の高いAIが本当に危険な運転だけを検出・可視化。管理者の確認負荷を減らし効果的な指導ができる。機能は随時追加。
- 他製品には少ない「本人への週次レポート通知」により、運転者の自覚を促し安全意識を高め、未然の事故防止を実現する。
運営会社
GOドライブ株式会社
| 管理範囲 | 動態管理 | 安全管理 |
|---|---|---|
| 運転者認証 | 顔認証(自動) | |
| データ閲覧 可能な人 |
管理者 | 運転者 |
| アルコール チェック |
連携・一元管理 | |
| プラン | 購入 | レンタル |
| トライアル | 可能 (台数による) |
|
特徴
- 一般的なAIドラレコは20km/h(※1)前後が限界とされる中、8km/h(※2)の低速でも携帯保持や喫煙を高精度に検知。 リスクを早期に可視化。
- 全世界から集めた50億(※3)km超の走行データでAIが進化。自社開発のハードが常にAIの最新アルゴリズムに対応し、導入後も高精度な安全管理を長期に実現。
運営会社
Nauto Japan合同会社
| 管理範囲 | 動態管理 | 安全管理 |
|---|---|---|
| 運転者認証 | 免許証 | |
| データ閲覧 可能な人 |
管理者 | 運転者 |
| アルコール チェック |
オプション | |
| プラン | 購入 | レンタル |
| トライアル | 2週間可 | |
特徴
- 安全管理の「Safety」、動態管理の「NEXT」、アルコールチェック、物流・バス向けなど、必要に応じて連携が可能。
- AIで危険運転を警告し事故回避をサポート、日常運転も含めた全走行データを収集、事故や危険運転の映像を直ちに再生可能。
運営会社
NTTドコモビジネス株式会社
(※1)参照元:LINEヤフー公式サイト
https://minkara.carview.co.jp/userid/3358572/blog/45150239/
(※1)参照元:電子情報通信学会公式サイト
https://www.ieice.org/publications/conference-FIT-DVDs/FIT2011/data/pdf/I-014.pdf
(※1)参照元:国土交通省公式サイト
https://www.mlit.go.jp/road/tech/pdf/catalog-hosou0030.pdf
(※2)参照元:「nauto」公式サイト
https://nauto.jp/service/road-safety
(※3)参照元:「nauto」公式サイト
https://nauto.jp/

